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日本大学ドイツ文学科

としまえんの回転木馬「カルーセル エルドラド」

 「としまえん」は東京都練馬区にある、開業94年の老舗遊園地です。2020年8月31日で閉園し、跡地はハリー・ポッターのテーマパークとなる予定というニュースが出ているので、知っている人も多いと思います。大きなプールもあるので、この記事を読んで下さっている方の中には、遊園地ではなくプールに行ったことはあるという人がいるかもしれませんね。

 私は練馬区で育ったので、としまえんはとても馴染み深い場所です。子供のころから、遊園地もプールも、何度も遊びに行き、成人式の会場もとしまえんでした。いつも身近にあると思っていたとしまえんが閉園してしまうのは、とても寂しいです。

 さて、そんなとしまえんには「カルーセル エルドラド」という、とてもレトロな回転木馬があります。1907年に作られたこのメリーゴーランド、実はドイツ製なんです!


 としまえんの公式HPの情報では、ヒューゴ・ハッセ(1857-1933)という機械技師が製作し、1907年のミュンヘンのオクトーバーフェストで披露されたそうです。エルドラドは後にニューヨークの遊園地に渡り、1971年にとしまえんに設置されました。エルドラドの歴史についてより詳しく知りたい方は、としまえんの公式HPをご覧ください。



 エルドラドは3段の構造になっていて、外側と真ん中の段には木馬やゴンドラが設置されています。


 木馬の他に、ブタさんもいます。


 一番奥の段は2人掛けのソファー席になっていて、まるでオペラ座の桟敷席のようです。

 この3段はそれぞれ別々の速度で回ります。支柱に近い奥の段が一番早く回るので、うっかりすると目が回ります。


 外側の天井画。アール・ヌーヴォー様式で天使と女神が描かれています。当時の流行りの美術を取り入れていたんですね。



 内側の天井画。天使と牧歌的な風景画で統一されています。支柱にはラッパを吹く女性の彫刻がつけられていて、メリーゴーランドの内装とは思えない豪華さです。


 メリーゴーランドの支柱。ドイツ語で書かれたプレートが2つありますね。何が書いてあるんでしょうか。

 上のプレート「Während der Fahrt sitzen bleiben」(走行中は座ったままで)

 下のプレート「Platzwechsel während der Fahrt verboten」(走行中の座席の移動禁止)

ただの注意書きでした(笑)

もうひとつ、別のドイツ語のプレートを見つけました。



 消えかかっていますが、こちらは多分「Fahrpreis/ Erwachsene 10/ Kinder 5」と書いてあります。日本語に訳すと「乗車料金/大人 10/子ども5」という意味です。料金表ですね。100年以上前のミュンヘンで活躍していた頃の料金でしょう。時代を感じます。

 せっかくなので、製作者ヒューゴ・ハッセについてドイツ語でも調べてみました。名前の綴りは ”Hugo Haase” なので、よりドイツ語に近い発音だと「フーゴー・ハーゼ」になります。(ちなみに、まったく同じ綴りで1863年生、1919年没の政治家がいますが別人。)

 ドイツ語のウィキペディアによれば、生まれはヴィンゼン(ハンブルクの南東)だそうです。移動遊園地の遊具を発展させ、メリーゴーランドやゴーカート、ジェットコースターを発明した人物とされています。ハンブルクのシュテーリンゲンには、1914年から1922年まで、Hugo Haase Parkという遊園地もあったようです。当時の写真や資料をまとめたYoutubeがありました。としまえんのエルドラドの特徴のひとつでもある、木馬ならぬ木豚の写真がありました。当時の流行りなのか、彼のメリーゴーランドの特徴なのかもしれませんね。

 さて、2010年に日本機械学会から「機械遺産」に認定されたとしまえんの「カルーセル エルドラド」は、閉園後、どこにいくのかはまだ決まっていません。解体されて、保管されることになりましたが、できれば近いうちに日本のどこかで、また私たちを乗せて楽しませてくれることを願っています。


(文責:三枝桂子)

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